「青野くんに触りたいから死にたい」読後は眠れないかも?ぞっとするホラーラブストーリー
基本情報
作品名 :青野くんに触りたいから死にたい
著 者 :椎名うみ
レーベル:アフタヌーンKC
出版社 :講談社
含む要素:ホラー(和製・幽霊)
高校生
恋愛
※記事掲載時 未完/既刊7巻
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・あらすじ
・どんな要素好きにオススメ?(←少しのネタバレも見たくない方はここからどうぞ)
あらすじ
君に触れるなら、死んでもいいよ。これがわたしの愛なんだ。アフタヌーン公式サイト「モアイ」掲載の1話が300000PV突破!話題の「青野くん」がついに単行本化!天然少女・優里ちゃんと、その彼氏・青野くん。ごく普通のお付き合いをしていたふたりだが、ある日突然、青野くんが「いなくなって」しまう……。絶対に結ばれないし、触れ合えないふたりの、でたらめで切実すぎるラブ・ストーリー。
(amazon/「青野くんに触りたいから死にたい」1巻紹介文より)
「男女がお付き合いしているのに、男の子がいなくなってから始まるラブ・ストーリーとは?」という感じだと思いますが、本当に初っ端に青野くんは「いなくなって」しまいます。
物語はタイトル通り、いなくなった青野くんに触るために優里ちゃんが「死にたい」と思うところから始まります。
それがきっかけで優里ちゃん自身や周辺に色々な変化があったり、異変が起きたり。そんなお話です。
推しポイント!(ネタバレ最小限/詳細なあらすじ含む)
まず初めに、上記「あらすじ」で”青野くんは「いなくなって」しまう”と書かれていますが、実は青野くんは開始15ページ以内に死にます。
普通はメインキャラが冒頭で死ぬことはほとんどないと思いますが、例外として幽霊モノの場合はそういったケースが存在します。
つまりお察しの通り、「青野くんに触りたいから死にたい」は幽霊モノです。
幽霊モノといってもコメディだったりミステリーだったりジャンルは様々ですが、こちらの作品はホラーです。そしてラブ・ストーリーでもあります。
↓が1話1ページ目ですが、初っ端からラブが始まる予感がビシバシしますね!
(※講談社公式ウェブコミック配信サイト/記事掲載時点では1~3話無料)
主人公は黒髪ロングでおとなしい女子高生、
もう一人の主人公、
「青野くんに触るためには死ぬしかない」と言う優里ちゃんとそれを阻止したい青野くんは、なんやかんやで交際を続けることになります。
――と、ここまでなら幽霊と人間のほんわかラブコメに舵を取ることもできそうですが、本作はホラー。
優しい男の子であるはずの青野くんが作中、時として別人のような顔を覗かせることで「このまま交際を続けていいのか?」という方向に話が進んでいきます。
"もう一人の青野くん"は通常状態の青野くんの意思とは関係なく現れ、
その度に明らかに物語を不穏な方向に展開させていく…
以上がこの作品の大筋になります。
この作品の最高に推したいポイントは、
「ピュアッピュアな恋愛、ぞわっとするおぞましさ、時々エロ、ちょいちょいシュール」
このどう考えてもワンセットにしたら喧嘩しそうな要素が絶妙なバランスで含まれているところです!
とにかくメインの登場人物がもれなくピュアなおかげで、恋愛だけでなく友情面でもほんわかじんわりしたシーンがたくさんあります。
自分の主張はしっかりありつつも、他者を理解しよう、受け入れようというスタンスのキャラクターたちに、読んでいてはっとさせられることが多いです。
ぞわっとするおぞましさについては、いわゆる"和製ホラー"をイメージしてもらうのが一番近いと思います。
わかりやすい脅かし要素はありませんが、何気ないシーンで急に不穏な空気になるのでハラハラします。
「え?」――そう思ってページをめくっている間に、じわじわと"幽霊のルール"に侵されている。
エロはラブコメ風な感じではなく、「なんかリアルだな…」という感じがします。
いやらしさを感じさせる描写ではないけれど、なんとなく生々しくてちょっと気まずい。でも、そこが良い!
シュールについては是非第1話を試しに読んで頂ければ!
そういう突拍子もないシーンはちょこちょこ挟まっているので、ホラー部分との落差がすごい。(誉め言葉)
また、メインはホラー・ラブストーリーですが、怪奇が絡んだシーンでは謎解き要素があったり、登場人物がそれぞれ抱える事情と向き合う場面などもあり、大変内容が濃いです。
特に抱える事情については、”本人が語る”ことがほとんどありません。
物語が進行していく中でぼんやり見え始める。
例えば1巻で登場する不登校の同級生、
ホラー映画にはルールがあるんです
(中略)
現実はそうじゃない
ルールで守られてるわけじゃない
ホラー映画よりずっとホラーだ
髄所に登場人物それぞれの背景を基にしたセリフや行動がありますが、それをくどく説明したりはしないので、何度か読んで初めて気づく場面もたくさんあります。
そういった部分になんとなくリアリティがありますし、受け手に解釈を委ねている感じで読み応えがありますね!
どんな要素好きにオススメ?
・ホラーが好き
>イラストからは想像できないくらいおどろおどろしい展開がほぼ毎話あります。
恐ろしい顔の怪物が出るだとかではないのですが、”ひたひた”、”ひっそり”、
”ぞわり”。そういった擬音がつくようなホラーです。
・考察が好き
>本作のホラー要素は、いわゆる都市伝説や妖怪など、
無関係の人間が事故的に巻き込まれるものではありません。
”何らかのルール”が下敷きにあり、それに則って起こります。
物語が進行するとそのルールもだんだん明確になっていくのですが、
今度はまた別の疑問が次々に湧いてくるような内容になっています。
主人公たちの活動範囲は狭く、向き合っている問題も大きくなっていないのに、
どんどん深度が増していく――考察が好きな方には飽きないストーリーです。
・行間を読むのが好き
>とにかく”多くを語らない”といった感じです。
キャラクター達が何かを感じているシーンには独特の”間”や
表情のみのコマなどがあり、それがめちゃくちゃにいい味を出しています。
読者側の息を吐くタイミング、はっとするタイミングに絶妙に入っていて、
とても世界観に浸りやすいと思います。
・報われなさそうな話が好き
>物語が始まった瞬間に、「これ、報われないのでは?」と頭に浮かぶはずです。
かなり綿密に練られたストーリーだと思うので、おそらくエンディングはすっきり
まとまって終わるだろうと予想していますが、そこに至るまでの過程に辛い展開が
多そうだな~という印象です。
(未完なので実際にそうなのかは不明かつ感じ方は読み手次第なので、
あくまで”そう感じるであろう要素が多い”というはなしになりますが)
(>>地雷要素が気にならない方はこちらで飛ばせます)
逆に回避すべき地雷ポイントは?
・急展開が苦手
>一般的な恋愛漫画と比較して二人が付き合うきっかけや好きなところといった
描写が少ない状態でスタートし、開始15ページ程でかなりの急展開を迎えます。
どうしてそこまで強い想いを持っているのか、なぜそんなにもそう感じるのか?
そういった”理由部分が薄い”と感じる方もいらっしゃるようです。
実際、物語の目的と言える部分が定まるのは2巻に入ってからですし、
”誰が見ても二人の相思相愛っぷりに納得できる”となるのはもう少し後です。
冒頭から明確な目的があり、主人公たちがそれに向かっていくといった
ストーリーが好きな方には不向きな可能性があります。
・ホラーが苦手
>本作はガチガチのホラー作品です。
ホラー耐性が低い方にはおすすめできません。
ゾンビや怪物系ホラーではなく、和製ホラー系です。
・性描写が苦手
>性描写メインではないので”致しているシーン”がまるっと入ってはいないのですが
恋愛漫画は好きだけど性的な接触は地雷、もしくは不要と考えている方には
適さない可能性があります。
・グロい描写が苦手
>内臓が出るなどの描写はないです。
皮膚が爛れている(という表現で正しいのでしょうか…)ような感じくらいですが
耐性が低い方はもしかしたら苦手かもしれません。
第1話を読んで問題なければその後も問題ないかと思います。
・絵柄が苦手
>決して稚拙ではないのですが、描き込みが少ない絵柄なので
そう感じる方も一定数いらっしゃるようです。
昨今よく目にするスマホアプリや漫画、アニメなどのイラストとは
明らかに絵柄が遠く、”見慣れていない”というのが大きいと思います。
”何が描きたいのか?””どういうシーンなのか?”はしっかり押さえていますし
作画にガタつきがあるわけでもないので、目が慣れてしまえば特に気になりません。
何より巻を追うごとにより画力が上がっていってどんどん読みやすく、
入り込みやすいイラストになっていきます。
ただ、どうしても絵柄が受け入れられる気がしない!という方は
避けたほうが無難かもしれません。
公式でお試し読みができる!
(記事掲載時1~3話)
上記の紹介で少しでも気になった方はまずは講談社公式ウェブコミック配信サイトでお試し読みをしてみて、それから購入を検討するのがおすすめです!>こちら
特に絵柄が気になる方は一度読んで頂いた方がいいかと思います。
どの漫画でも言えるのですが、基本的には物語の進捗度に比例して絵や表現はどんどん洗練されていきますので、多少苦手な絵柄あってもお試し読みを読み終えられるようであれば恐らく大丈夫です。
ちなみに
もし「青野くんに触りたいから死にたい」の既刊を読んで、「この著者の作風が気に入った!」となったときは、短編集の「崖際のワルツ」も是非ともオススメです!
「青野くんー」より古い作品集なので絵柄の安定感などは劣りますが、椎名うみ先生の世界観はそのままです!
特に表題作の「崖際のワルツ」は続きが読みたくなってしまうくらいワクワクする面白い作品なので是非!